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愛知県豊田市の税理士、加藤裕税理士事務所です。相続税、相続対策、贈与税、土地譲渡、法人税、所得税など税に関する問題は、当事務所にお任せください。

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回復見込みなしなら評価損計上

2010.03.08

日航の経営再建を主導する企業再生支援機構は、同社の支援計画を発表し、100%減資を行う方針を明らかにしました。これを受けて、東京証券取引所は、同社株式を「整理銘柄」に指定。これにより、2月20日の上場廃止をもって、既存の日航株は紙くずとなることが決定しました。
 わが国を代表する航空会社として、日航株は長らく“安定株”とされ、企業が長期保有目的で取得しているケースが多くみられました。こうした企業にとってみれば、長期保有目的で取得した株式の評価損を損金に算入できるのか気になるところです。
 株式の評価損を損金算入できるのは、株価が「著しく低下」した場合に限られます。ここでいう「著しく低下」とは、株価が帳簿価額のおおむね50%以上下落することです。ただし、株価が50%以上下落していても、近い将来に株価の回復が見込まれる場合には、損金算入は認められません。また、株価が帳簿価額の50%以上下落していなくても、過去の市場価格の推移や市場環境の動向、発行法人の業況などを総合的に勘案した合理的な判断基準を示している場合は、その基準が尊重され、損金算入が認められます。
 今回の日航のケースに当てはめてみると、既に株式上場廃止が決定しており、株価の回復可能性がないことから、長期保有してきた日航株の評価損は損金算入が可能です。
 ちなみに、単純に株価が暴落しているケースでは、「株価の回復可能性を判断する時期」が問題になります。つまり、合理的な基準のもと期末に評価損を損金算入しましたが、翌事業年度中に株価が回復したようなケースでは、損金算入した評価損を是正する必要があるのか、ということです。
 この場合、事業年度をさかのぼって処理を是正する必要はありません。株価の回復可能性の判断は、あくまでも期末時点で行うもので、事後的な事情は当事業年度における株価の回復可能性の判断に影響するものではないためです。